逗子駅近くの精神科・心療内科診療所。逗葉メモリークリニックは、物忘れ・認知症、うつ病・不安障害や不眠症を専門的に診療します。

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うつ病

うつ病とは??正しい知識と理解のために(後編)

前編では、うつ病による精神と身体症状についてご説明させていただきました。今回はうつ病と診断されてからの対応についてお話しいたします。
「うつ病と診断されて休職して療養しているのに、不安や緊張状態が続いて全くリラックスできず、頭痛も続く。気持ちを切り替えることができない。不眠も出ている」といった経過は臨床の現場ではよく見られます。

これは、ストレス環境から離れても慢性化したストレス反応が解除できず、脳内の神経細胞に休息を与えて回復させることもできないので、堂々巡りの不安や落ち込みからまたストレス反応が持続している、といった状態を示していることが考えられます。いずれにせよ、こうした状態ではせっかく療養していたとしても、真の意味では休息をとれず、脳内の炎症や自律神経系系の失調、内分泌系の枯渇から回復することは難しいと考えます。

野球選手に例えると、『やる気がだせず、打率や防御率が落ちこんで試合を休場しているが、それは心の問題ではなく、疲労骨折が原因だった』というようなイメージが近いでしょうか。この場合には疲労骨折を起こした箇所へのレントゲン検査やギプス・松葉杖、鎮痛剤による治療や、試合の休場と療養、そしてリハビリが適切な対応となり、やる気を振り絞っての特訓はむしろ疲労骨折を悪化させる(なのでそうしたことを行ってはいけない)とイメージしやすいと思います。

うつ病に話を戻すと、問診や採血検査など各種検査を行うことがレントゲン検査に、抗うつ薬がギプスや松葉杖に、抗不安薬などが鎮痛剤に、休職や休学が試合の休場に例えられるものだといえます。(野球選手の療養とリハビリと趣が異なりますが、やはり療養や回復段階に応じたリハビリ的な生活習慣を取り入れてゆくことが、効果的な治療につながることが多いものです。)

統計上でも、医師の診療を受けない場合(例えば休養を取って自然経過に任せるなど)、治療成績は悪いとされております。個人的な臨床の経験からいうと症状からの回復が不十分であったり、回復が大幅に遅れる印象です。

まとめると、うつ病というと心の病気というイメージが強いと思いますが、実際は心身両面に症状が出る脳神経系・自律神経系・内分泌系の失調であり、ある意味内臓の故障であるということがいえると思います。

そこから出現する落ち込みや不安感、意欲低下などの精神的な症状は、例えば脚の骨折の際に出現する疼痛や歩行障害といった症状のように、個人の人格や気合・根性と称されるような意志力ではとうてい制御ができない生理的な現象といったところでしょうか。

歴史に並び称される偉人・聖人であったとしても、このような脳神経系・自律神経系・内分泌系の失調をきたせば、われわれと同様に落ち込みや不安感、意欲低下などの精神的な症状を示すと思います。(そもそも、健康な状態であってすら、個人の人格や意志力という精神力も、結局位は脳神経系・自律神経系の状態などの要素で変動する、生物学的な限界がある『有限の資源』であるという見方も研究がすすんでいます。)

繰り返しますが、うつ病に見られる、自身ではままならぬ心身の不調・精神的な不調の原因は、しばしば必要以上に自分自身の努力の不足と考え、自身を責めてしまうものです。(自信を支える周囲を責めてしまう場合もあります)

しかしながらそうした行動や思考が、効果的な治療につながることはまれで、更にストレス反応を増強させ、うつ状態の悪化を招くものです。(イメージとしては脳内の炎症に続く神経伝達物資の枯渇・ストレス反応の持続による副腎内分泌系の枯渇が関与するといったところでしょうか。)

そのような悪循環を食い止めることも、我々精神医療・福祉専門職(町のメンタルクリニックや精神科病院の医師・看護師、社会福祉支援士、臨床心理士などなど…。)の大切な使命の一つであると思います。

うつ病は例え診断を受け、休職や薬物治療を始めるなどして療養を開始しても、症状の変化は一進一退となり、心身両面でつらい思いをする時期が続くこともままあります。

ほとんどの専門家は、わずかずつでも着実にうつ病からの回復の道筋をお支えすることを、心からの使命としているものと思います。まだ診断を受けていない状態であっても、治療の経過中であっても、うつ病を疑うようなにある際は、自分自身やお身内だけで抱えることは避け、専門家のサポートを取り入れていただくことを医学的見地から推奨いたします。

貴重なお時間を割き、最後までお読みいただきありがとうございました。

平山 大雅

平山 大雅

逗葉メモリークリニック 院長 / 医師 神戸大学医学部卒業
日医認定産業医・認知症サポート医

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