逗子駅近くの精神科・心療内科診療所。逗葉メモリークリニックは、物忘れ・認知症、うつ病・不安障害や不眠症を専門的に診療します。

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うつ病

うつ病とは??正しい知識と理解のために(前編)

うつ病は心身両面に症状が出る、大変つらい病気です。

例えメンタルクリニックを受診し休養や治療を開始したとしても、自分を責め続けてしまう、または周囲にイライラし続ける(あるいはその両方)など堂々巡りの否定的な思考にとらわれることもあるかもしれません。そんな方や、大切なご家族がそのような状態となった方に、今回のブログをご高覧いただければ深甚です。

うつ病の代表的な症状には、気分の落ち込み(何事にも興味を持てなくなったり、楽しいことが楽しく感じられなくなったりします。)、意欲の低下(仕事や家事など、日常生活に対する意欲が低下します。)という精神症状や、睡眠障害( 眠れない、寝ている途中に何度も目が覚めてしまう、早朝に目覚めて寝付けない)、食欲不振(食欲が減退し、体重が減少することがあります。)倦怠感といった症状があります。また、 頭痛・肩こり・腰痛・下痢または便秘などの身体症状が現れることがあります。

うつ病は精神的な症状が目立つところから、心の病気というイメージが強いと思います。

しかし、近年の研究では、精神と身体両方に症状が出る、脳・自律神経系・内分泌系の障害という見方で研究が進んでいます。そのうち代表的な見方を3つご紹介します。

1つ目は脳内の神経伝達物質の働きの不具合という見方です。

健康な状態にあるとき、脳内の神経細胞が神経伝達物質を介してさまざまな情報をやり取りすることで安定して精神活動が営まれているものですが、うつ状態にあるときは神経細胞が長期に渡るストレスや精神的な疲労によってダメージを受けているので、脳内神経伝達物質の量や機能は低下してしまうので精神活動が不安定になる、というものです。うつ病では脳内神経伝達物質の中でもセロトニンやノルアドレナリンやドーパミンの機能が低下しており、感情のコントロールが不安定になり、気分の落ち込みや不安、意欲の低下が出現したり、不眠や食欲不振などの症状があらわれるとされています。

2つ目はBNDFと脳内炎症が関連しているという見方です。

脳内炎症がどのようにうつ病に関連しているかは、まだ完全には解明されていませんが、脳内の神経細胞は長期に渡るストレス・疲労によってダメージを受け続けるとBDNF(脳由来神経栄養因子)が枯渇し、慢性的な炎症状態となり、上記の脳内伝達物質を作り出したり、働かせることができなくなると考えられます。

3つ目は自律神経系統と副腎内分泌系(視床下部-下垂体-副腎皮質系あわせてHPA系ともいいます)が関わるストレス反応が慢性化しているという見方です。

ストレス反応は、闘争(fight)、逃走(flee)、凍りつき(freeze)の3Fの状態に代表される、生存を高めるための反応です. 原始時代から、人間の祖先たちは、凶暴な動物に襲われて、危険な場面に遭遇したときに、自律神経系と副腎内分泌系を介してこの3Fが起きるように、脳の中にインプットされています。
危険な状況に直面したときに、闘争反応はからだを縮めて緊張させ防衛姿勢をとる。逃走反応は、呼吸は浅く脈は早くなり、走って逃げ出す準備をとる。凍りつき反応は、予測不能な事が起きたときに起こる、身体が硬直して動けなくなる。周りの気配が気になり、自分の身の回りに危険が迫ってこないか気を配ってしまう。といったものが代表的でしょうか。
現代の生活では凶暴な動物と遭遇することはないですが、職場などでの不安や落ち込みなど思考や感情が長期にわたって続くことで、慢性的な3F反応を抱え続けることはしばしばあるのではないでしょうか。その結果生じる締め付けられるような頭痛を伴う肩こり、腰背部の強張る腰痛、動悸や息切れ、胃もたれ、便秘や下痢(あるいはその両方)、身体の症状は自律神経失調症として知られていますが、不安や落ち込み、周囲へのイラつきといった精神的な不調を伴うことも珍しくありません。(場合によっては適応障害、不安障害といった精神科の診断することが適切となることもあります。)

自律神経系統は交感神経系統と副交感神経という、それぞれ緊張とリラックスをつかさどる二種類の神経系統から成り立っています。車でいうとアクセルやブレーキに例えられます。ストレス反応が慢性化した状態(自律神経失調症)とは、必要もないのにアクセルが入りっぱなし、あるいはサイドブレーキがかかりっぱなし、あるいはその両方といった状態が近いものだといえるでしょう。
自律神経系が心身のストレス反応を引き起こしている際、視床下部から放出されるホルモンが下垂体からのアドレナリンやノルアドレナリンの分泌を誘導し、これらは副腎からストレスに抵抗するためのホルモン、コルチゾールを分泌させます。
コルチゾールはストレスに耐える期間が一時的なものであれば、正常な量が分泌されて。ストレスにさらされても神経細胞が保護されます。この場合はうつ病のリスクを低下させるなど、ストレスに対応することができます。
しかし、ストレスに耐える期間が長期にわたると、過剰に分泌されて脳内を含む全身の慢性炎症の一因となったり、副腎が疲れきってしまいコルチゾールが枯渇するなどして、やがてストレスに対処できなくなってしまいます。
実際のところ、うつ病を患った方の体内では、ストレス反応を制御する視床下部-下垂体-副腎皮質系(HPA系)による制御機能が減弱し、ストレス反応が亢進していることが知られています。
診察室でうつ病を疑うケースですと心身の緊張が慢性化しており、心身ともに枯渇しきった印象です。半年以上の期間でストレスに耐え続けていたケースが多いように思いますが、ここから生じる落ち込み思考・不安とストレス反応の関係は互いに互いを強めあう、深刻なものが考えられます。
つまり、BNDFの枯渇と脳内炎症の結果、神経伝達物質の機能が低下したうえに、自律神経失調や副腎内分泌系の亢進や枯渇(慢性的なストレス反応の持続)があり、個人の意志力と関係なく出現する『不安』『落ち込み思考』が慢性的なストレス負荷となり、ストレス反応状態や脳内炎症を持続・増強させてしまう。その結果、さらに脳内の神経細胞・自立神経系や内分泌系を過剰に緊張、消耗・枯渇させてしまうといった堂々巡りとなってしまいます。

後編に続きます。

平山 大雅

平山 大雅

逗葉メモリークリニック 院長 / 医師 神戸大学医学部卒業
日医認定産業医・認知症サポート医

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